「海のミルク」と呼ばれるほど栄養価の高い牡蠣。
プリプリの食感と濃厚な味わいで、牡蠣の季節が待ち遠しいという人が多いのではないでしょうか。
しかし、牡蠣はあたる、つまり食中毒になりやすい食材の一つです。
そこで、この記事では、牡蠣を安全においしく食べることができるように、牡蠣のことをとことん解説していきます。
日本で食べられている牡蠣には主に2種類あり、
です。
冬の食卓に並ぶ牡蠣はマガキ、夏にお刺身で食べられる牡蠣はイワガキです。
牡蠣の食中毒と聞いて最初に思い浮かぶのは、ノロウイルスではないでしょうか。
マガキが出回る11月~2月の冬場にノロウイルスも流行します。
一方、海水の温度が上昇する5月~9月の夏場に出回るイワガキは、ノロウイルスよりも腸炎ビブリオという細菌性の食中毒が心配されます。
また、貝類がエサにしているプランクトンの中には有毒なものも存在しており、有毒なプランクトンを含んだ貝を私たちが口にすると、貝毒にかかってしまいます。
ノロウイルスや腸炎ビブリオなどの感染症は、その人の免疫力に左右されます。
不規則な生活をしていたり、体調がすぐれないときに、牡蠣を食べるとあたりやすくなります。
男女差があるわけではありませんが、子どもや高齢者は免疫力が弱いため、あたりやすいでしょう。
普段から冷たいものをちょっと食べただけでお腹がゴロゴロするという人も気を付けたほうがよさそうです。
反対に、免疫力が強く、ノロウイルスが含まれている牡蠣を食べても症状が出ない、ということもあり得ますので、体調管理はしっかりしましょう。
また、牡蠣を食べると毎回あたる、嘔吐や下痢などの症状が出るという人は食物アレルギーの場合もあるので、注意してください。
ノロウイルスの場合、原因食品を食べてから12-48時間の潜伏期間を経て、嘔吐・激しい下痢・腹痛に襲われます。
症状は1-2日で治りますが、便の中に数日間から1か月ほどウイルスが存在していることがあるので、注意が必要です。
腸炎ビブリオの場合は、12時間前後の潜伏期間後に耐えがたい腹痛・嘔吐・頻繁な下痢といった症状が出ます。
腸炎ビブリオは、牡蠣以外にも、魚介類に付着している場合が多く、生の魚介類を置いたまな板から間接的にうつることもあるので気を付けましょう。
貝毒の潜伏期間は種類によって様々で、下痢や嘔吐などの症状が3日ほど続くものから、麻痺性の毒により死亡に至るケースもあります。
貝毒は、基本的に加熱調理をしても、冷凍保存をしても死滅しません。そのため、貝毒が検出された海域からは出荷しないように、定期的に検査が行われています。
食中毒の症状を紹介してきましたが、牡蠣アレルギーの場合も、腹痛・嘔吐・下痢といった同じような症状があります。
しかし、アレルギー特有の喉のかゆみやじんましん、発疹が現れることもあるので注意してください。
そして、決定的な違いは、発症時間です。食後1-2時間で症状が出ればアレルギー、半日から2日後なら食中毒と考えられます。
牡蠣アレルギーの場合、牡蠣エキスを使ったオイスターソースでも反応することがあるので覚えておいてください。
牡蠣には
の2種類があります。
「生食用」は、保健所の指定した海域で育ったもの、「加熱用」はそれ以外の海域で育ったものです。
「生食用」は定期的に水質を検査された海で育てられるので、生で食べられる安全性があります。しかし、「加熱用」に比べて、うまみ成分や栄養成分が減少していることもあるようです。
「加熱用」は、豊富な栄養やプランクトンを含んだ海で育ったもので、味が濃いと言われています。
しかし、上の項目で紹介したウイルスなどに、汚染されている場合もあるため、生で食べることは避けましょう。
ちなみに、「生食用」は食品衛生法上のルールに基づいて生菌数や大腸菌数が基準をクリアしていることであって、ノロウイルスの基準はなく、ノロウイルスに汚染されていないことを証明しているわけではありません。
菌が少ない=ノロウイルスも少ないだろうという考えですね。過信は禁物です。
ノロウイルスや腸炎ビブリオは、加熱することでウイルスや菌の活性が失われます。
ノロウイルスは中心部85-90℃で90秒以上、腸炎ビブリオは中心部60℃で10分以上の加熱が望ましいとされています。
カキフライやお鍋で食べる牡蠣は、しっかりと中心部まで火が通るので、安心して食べることができますね。
ただし、貝毒は加熱しても毒性は変わらないため、食べているときに異変を感じたら、すぐに食べるのをやめましょう。
牡蠣を美味しく調理する方法はこちらの記事でご紹介しているので、ご覧ください。
牡蠣を美味しく調理する方法!火の通りや茹でる時間、おいしい焼き方
調理がとても簡単なレンジでの調理方法はこちらでまとめているので、ご覧ください。
牡蠣は子どもにも栄養満点でおすすめです。子どもでも食べやすい牡蠣レシピをまとめているので、ご覧ください。
商品によっては冷凍して販売されている牡蠣もあります。
冷凍牡蠣の多くは加熱調理用と書かれています。
ノロウイルスは冷凍しても死滅しませんので、加熱が不十分だと感染の可能性はあります。
冷凍牡蠣の生食は避けましょう。もちろん、生食用を冷凍保存した場合でも、解凍後は必ず加熱調理してください。
冷凍牡蠣で牡蠣鍋をする場合は、おいしくしっかりと加熱もできるので、おすすめですよ。
冷凍牡蠣で鍋料理をする際の下処理方法と簡単で美味しい3つの牡蠣鍋レシピ
もし牡蠣にあたったら、残念ですが、治療薬はありませんので、とにかく原因菌を体外に排出することが大切です。
下痢や嘔吐を繰り返すのはそのためです。下痢だからといって下痢止めを飲んではいけません。
排出作用を止めてしまうので逆効果です。
脱水症状を避けるために、こまめに水分をとることが大切です。無理せず医療機関へ行くようにしてください。
下痢や嘔吐の処理をする場合は、手袋やマスクを着用するなどして二次感染にあわないように注意してください。
また、食中毒が起きた時の調理に使った食器や包丁・まな板などの調理器具も洗浄消毒をしっかり行いましょう。塩素系漂白剤が有効です。
保育所や老人施設で集団給食を提供する仕事をしている管理栄養士の筆者は、牡蠣を食べません。
なぜなら、集団給食を提供する側の人間が、食中毒にかかってしまうと仕事にならないからです。
保菌という状態もあるわけで、気付かないうちに被害を拡大する恐れもあります。
不可抗力の食中毒にあたってしまったならともかく、食中毒になるかもしれないとわかっている食材をわざわざ食べません。
絶対ではありませんが、栄養士・調理師の中には、筆者のように牡蠣を食べない方々もいらっしゃるかと思います。
ですが、牡蠣は栄養価が高くヘルシーですばらしい食材です。
きちんと調理をすれば、妊婦さんにも、筋トレをしている方にも、お子様にもおすすめできるくらい栄養が満点ですよ!
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この記事を読んだ牡蠣好きの皆様が、正しい知識を持って、食べ方に注意し、安全に牡蠣を食べることができれば、と願っております。
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